ドラマの強烈なワンシーンや人づてに聞いたことが原因で、外資系企業はクビになりやすいというイメージがついているかもしれません。
この記事では、外資系企業におけるクビ、すなわち解雇がどういったものか、イメージ通りなのか、詳しく解説していきます。
目次
Career Study
日本企業における「解雇」とは
- 普通解雇
- 懲戒解雇
- 整理解雇
上記の3つについて解説していきます。
普通解雇
普通解雇とは、一般的にイメージされる「解雇(=クビ)」と同等のものです。
普通解雇とは、明らかな能力不足や勤務態度が悪いなどを原因とした解雇です。
もちろん、そのまま本当にクビにできるかどうかは、どの程度適切な判断であると認められるか次第ですが、これがいわゆる普通解雇です。
懲戒解雇
懲戒解雇は、懲戒処分による解雇です。
法律に違反した、パラハラやセクハラをした、などが懲戒解雇の理由になります。
会社が定めた規定を守るのは会社に所属する者として当たり前に求められることであるため、会社の規定に違反した場合に懲戒解雇になりえます。
また、会社の規定以上に我々が守らなければならないのは、社会の法律です。
法律に違反し、それが悪質だった場合には懲戒解雇になるのです。
ですが、経歴詐称や履歴書に書いてあることが嘘であり、かつ能力不足が分かった場合などは「懲戒解雇」による解雇が妥当となります。
整理解雇
事業の整理や統廃合、それによる部署の廃止などが起こる場合があります。
その結果、余剰人員になってしまったり、配置転換先の部署がなかった場合などに起こるのが整理解雇です。
リストラとはリストラクチャリングの略称で「再構築」や「縮小再構築」などの意味合いを持っています。
部署を縮小再編成して再出発することがリストラクチャリングで、それによって発生した解雇はリストラではなく整理解雇です。
ですが、日本における急な一方的解雇が言い渡される数少ない例があるとすれば、この「整理解雇」が理由になるのではないでしょうか。
外資系企業における「解雇」とは
そもそも日本以外では、正社員雇用といった概念もあまり定着していません。
パートタイムの雇用かフルタイムの雇用か、雇用に期間制限があるか無期限での雇用か、といった時間や期間の違いは明確です。
ですが、日本のように正社員か契約社員か派遣社員かアルバイトか、といった雇用形態の概念は希薄なのです。
雇用に対する考え方が異なっているため、当然解雇に関する考え方も違います。
ここで確認しておきましょう。
能力不足による解雇
日本企業での「普通解雇」と同じことが行われます。
この「能力」のなかには、生産性が低いことやミスが多いことだけでなく、チームのなかで協調性がないといったものも含まれます。
日本企業では「人」を採用する傾向があるため、一度採用した人は、特定の部署で能力不足でも、特定のチームで折り合いがつかなくても、配置転換して雇用を続けようとします。
外資系企業では「ジョブ型(職務内容やスキル、経験などを限定して採用する雇用形態)」の採用であるため「このチーム・仕事」で成果を出せないなら、解雇されるのです。
何度も能力不足を指摘されたり、チームメンバーとのチームビルドを呼びかけられるのは「このままだとクビになるぞ」という予兆です。
レイオフ(一時的解雇)
レイオフとは、一時的な解雇のことです。
業績悪化時や事業撤退のために、一時的に支社や部門を閉じる、などの場合に起こります。
「一時的」な解雇であるため、その後の再雇用が前提となります。
ただし、再雇用前提ではあるものの、給与などの保証はなく、一時的解雇の期間中は会社から給与が支払われません。
そのため、実質的な解雇と同じと捉えられる場合も多いのです。
従業員の側もレイオフ期間中に転職活動を行うのは普通のことで、転職先があれば転職し、見つけられないまま再雇用の連絡があれば再雇用される、ということもあります。
退職勧奨
日本企業と比べて法的にも解雇しやすいとはいえ、いきなり即日解雇になると従業員側からの訴訟リスクもあります。
そのため、従業員の意思を無視した急な解雇は、会社側もやりたくないのです。
そんなとき、一定の金額保証を行うので退職してほしいと会社側から持ちかける「退職勧奨」が行われます。
日本企業でも、大企業が整理解雇などを行う際に早期退職を募集するなどして、退職勧奨が行われたニュースなどを、聞いたことがある方もいるでしょう。
日本でも「パッケージ」などと呼ばれる「severance package」という退職手当が提示され、退職を受け入れるとお金が支払われます。
多くの場合、退職金として支払われることになり、概ね給与の1ヶ月分~多いと1年分以上がもらえる場合もあります。
会社規定で「パッケージ金額はいくらである」と決められていることもありますが、交渉によって規定以上の金額で退職勧奨を受け入れることが一般的です。
外資系企業ではこの退職勧奨が多く行われており、なるべく円満な退職をしてもらおうと企業側も努力しているのです。
なお、退職勧奨に応じるかどうかは任意であり、退職したくない、と意思表示することもできます。
撤退による整理解雇
外資系企業に特有なのが、事業所の撤退による整理解雇です。
日本企業の場合は、特定の事業から撤退しても別の部署に振り分けられ、雇用が続くケースが多くなります。
ですが海外の企業は「ジョブ型雇用」のため「その仕事のために雇った人」は解雇するのが普通なのです。
ただし、そのまま完全に整理解雇になるわけではなく、レイオフになったり事前に退職勧奨を行ったりすることもあります。
Career Study
【結論】外資系企業もそれほどすぐにクビにできるわけではない
結論として、外資系企業もそれほどすぐにクビにできるわけではないことを覚えておいてください!
「日本企業が特に解雇されにくいだけ」という話もしてきましたが、だからといって、外資系企業は解雇されやすいわけではありません。
なぜなのか解説していきます。
日本法人での採用は日本の法律に従うから
外資系企業の本社は、当然ながら日本にはありません。
本社採用であれば、本社がある国の法律が適用されます。
ですが日本法人での雇用の場合、これまで何度かお話してきた「解雇しにくい」日本の労働契約法が適用されるのです。
そのため、基本的に解雇のしやすさは日本企業と同程度であると考えて問題ありません。
本国の慣習に従って、整理解雇などの際に退職勧奨が行われることはあります。
ですが退職勧奨を受け入れるかは任意ですし、提示金額も交渉次第では満足いくものになるはずです。
ですが、まったく説明もなく保証もない、不当な解雇が行われることはあまりないと考えておいて良いでしょう。
そもそも解雇が多いのはアメリカが悪目立ちしている
「外資系企業」と言ってきましたが、外資系企業の本拠地にもいろいろあります。
その中でも、特に解雇されやすいイメージがあるのは主にアメリカで、ヨーロッパなどは日本よりは解雇されやすい程度です。
アメリカでは外資系コンサルティングファームによくあるような「アップ オア アウト(昇給するか、辞めるか)」といった価値観が根づいています。
これは裏を返せば「昇給してくれないなら、出ていく」という従業員の目線をも含んでいます。
簡単に解雇する文化があるのと同じくらい、社員自ら辞めていく文化も根づいているのです。
そのようなキャリア観であるため、転職回数などは問題になりません。
ですが、各国それぞれが異なるキャリア観を持っていますし、外資系のなかでもアジア系企業なら日本に近い雇用を行うケースもあります。
センセーショナルな解雇の様子が取りざたされ、それが悪目立ちしてしまっているだけで、実際には退職勧奨などの穏便な手段や相談の機会も設けられているのです。
TAKASHI KAWAHARA
転職前提のキャリアプランを作ることもイメージの一員
終身雇用型の雇用がしばらく根強かった日本では、転職回数が少ないほうが良いとされることもあります。
ですが、他の国では転職を繰り返すことが前提のキャリアプランを立てることが多いのです。
転職回数が多くても、まったく気にされません。
そういったキャリア観の違いも、解雇や雇用の習慣に影響を与えているでしょう。
そもそも日本も終身雇用型の採用がされるようになったのは近世以降で、一時しのぎとしてすぐ辞める前提の仕事を行う「腰掛け仕事」という言葉もあるほどです。
近年では、日本でも以前ほど転職回数を気にする風潮は弱まっていますが、根強く残っている企業は多いです。
少し前の終身雇用型の雇用慣習が特別で、それに基づいた解雇されにくい日本の習慣は世界的にも珍しいものであると認識しておきましょう。
そうすれば、必要以上にクビになることを怖がらなくても良くなりますよ。
まとめ
外資系企業は、確かに日本企業と比べると解雇されてしまうリスクが高いと言わざるを得ません。
とはいえそれは日本企業における雇用が世界的に見ても類を見ないほど守られているからであり、それと比べたら解雇されやすいです。
もちろんですが、外資系企業を志望するのであれば、そういったリスクもリターンも考えたうえで検討したいものです。
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気になった方は、まずは一度、検討だけでもしてみてはいかがでしょうか。
TAKASHI KAWAHARA
日本は世界の中でも独特の雇用習慣をもつ
大学卒業の時期に新卒一括採用を行うこと、崩れたとはいえ深く根付いている終身雇用的な雇用の慣習など、日本の雇用習慣は世界の中で独特です。
労働契約法によって、正社員の雇用が守られているというのも日本特有のこと。
一度、正社員として雇用してしまうと、簡単には解雇できないため「正社員にするかどうか」の審査が非常に厳しいというのも日本ならではです。
そのため「外資はクビになりやすい」のではなく「日本企業は世界のなかでも特別にクビになりにくい」と覚えておいたほうがいいでしょう。